3つの原始反射(恐怖麻痺反射、モロー反射、緊張性迷路反射)の統合

カイロプラクティックとは?

1895年にアメリカのダニエル・デビッド・パーマーによって創始された手技療法。名前の由来は、ギリシャ語で「カイロ」は「手」、「プラクティック」は「技術」を意味する造語。WHOは、補完代替医療として認めています。

世界保健機関の定義では、「筋骨格系の障害とそれが及ぼす健康全般への影響を診断、治療、予防する専門職である。」

政府は「カイロプラクティック療法は、脊椎を調整することにより、神経の回復を図ることを目的とする療法とされており、この点においてあん摩マッサージ指圧と区別されるものと考えられる」

自閉症スペクトラム障害の予防、診断、治療に関する科学的な真実
そして親たちが今できること

この本は、実証的な研究を基にして書かれた実践的な本です。

Dr. Robert Melilloは、遺伝的、環境的、および生活習慣的要因を含むさまざまな側面から既成概念を払拭し、両親にできる予防計画、早期の徴候の発見、乳幼児のための介入プログラムなどの明確なアドバイスを提示した内容となっています。

子どもは、一人では成長できない

1999年に、「大丈夫?子どものカラダ」*1を出版しました。その時の園児から高校生に関して、「現代の子どもについて気が付いたこと、感じたこと」のアンケート調査を500人の親、保育士、教師にしたところ、「授業の間じっとしていられない」、「落ち着きがない」、「ボーっとしている」、「座っていられない」、「やる気が出ない」という答えが圧倒的に多いという結果が出ました。 その頃の子どもは、今や子どもを持つ親になっています。世代は1巡しています。この時間の流れの中で、私たちに課されている役割の重要さを受け止めて、子どもを持つ家庭に幸せが訪れるように努めましょう。

脳の発達と働き

1:99とは何?

「脳全体のうち意識して使えるのは1%で、残りの99%は無意識で働いています。無意識のうちに様々な調節を行っています。この調節機能としての脳が正常に働かないと意識して動かそうとしてもうまくいかないということです。(例えば、うまく字を書こうとしたり、マット運動をしようとしても筋肉の緊張が強いままでは、しなやかな指の動きや体の動きをすることが出来ません)言い換えると調節機能の脳の発達が促されていないと意識しても何事もうまく出来ないということです。」
療育で、意識していろいろやらせてもなかなか成果が見られないのはそのためなのです。これからカイロで施術していく上で、調節機能の脳へのアプローチが大切であるということを知っていただきたいと思っています。

 

脳の発達の順番と働き

脳の発達の順番

©ブレインアクティベート協会

神経の発達は中心から外、下から上、後ろから前に発達していきま
す。

脳は、「原始的な脳」から順に「進化した脳」へと神経が成長していきます。

生存に必要な原始的な脳(脳幹)は、胎児の頃から神経の成長が始まり、生後、間脳(視床、自律神経系)、大脳辺縁系、大脳新皮質の順に、成長していきます。

私たち人間は、受精卵から胎児に育つまでの間、系統発生を繰り返し、原始の記憶 をたどりながら人の姿・機能へ進化していきます。

体性感覚から歩行へ?

©hatioji-tudoi.muragon.com

*言葉が分からない赤ちゃんは感覚から育つ
*体への刺激で右脳が育つ
*右脳は体性感覚を養う
*体性感覚は自分と他人の心の距離感を養う
*体性感覚が育つと運動機能が発達する
*右脳は穏やかな脳
*右脳が育つと左脳の成長に移る

子どもの発達の可能性

発達のデコボコとは?

「発達障害」として自閉症、注意欠陥多動性障害、学習障害など、医学的に治らない障害として扱われています。今までの研究では、遺伝的な要因が上げられていますが、原因のすべてではなく、薬剤、ウィルス、栄養、環境等複合された要因によるものであるということが分かってきました。また、言葉の氾濫から過敏に「発達障害」と決めてしまっている現状もあります。遺伝的要因が強い場合を除いて、栄養や環境が発達に影響しいるならば、私たちの力で発達の遅れを取り戻すことが可能です。

神経の性質を利用しよう

脳を構成する神経細胞と神経ネットワークは、良くも悪くも常に状況に応じて一生の間変化し続けるという性質があります。使わないものは死んでしまいますが、使っているものは強化されたり新しいネットワークが出来たりします。年をとっても新しいことが出来るようになります。

これを「神経可塑性」と言います。 この神経可塑性を使って子どもたちの発達を促してあげようということです。

発達には順番があります。順番どおりになっていないところを見つけてあげて、順番を正してあげるようにするために「原始反射の統合」を利用する方法をカイロプラクティック、キネシオロジー、療育で開発されてきました。

原始反射とは?

生き残りの反射

人間は生まれた時に、外界に対しての生存能力を備えないままで生まれてきます。その際、赤ちゃんは生まれつき備わっている反射行動(生存本能)を使って外界に対応していきます。例えば、生まれると「オギャ―」と泣いて肺呼吸が出来るようになります。いわば「生き延びるためのスイッチ」で、その反射を「原始反射」と言います。

神経の繋がりを強くする

原始反射の働きは大きく2つ、生き残るためと将来 の学習や生活の土台のためにあります。

成長するに したがって、これらの原始反射は必要ではなくなり 「卒業=統合」します。卒業=統合を繰り返すことで、より上位の脳の神経の繋がりが強くなり前頭葉 でコントロールするようになります。

これらの動きがコントロールされず、成長しても勝手に原始反射の振る舞いが起こってしまうことを原始反射統合不全と言います。いわゆる「発達障害」と言われる子供たちは生存本能のコントロールがうまく出来ていないため、常に力が入ってしまったり、気が散ってじっとしていられなかったり、物事がスムーズにできないといった身体のコントロールが自分の意思で出来ないことが出てきます。

6か月までに原始反射は統合される

医学的には約6か月までで原始反射は統合されます。 (足底把握反射は9ヶ月、STNRは這い這い移行期に出現するため、12ヶ月までかかる)

反射の役割は建築と同じ

*家に例えれば、土台が原始反射
*柱や梁が立ち直り反応や平衡反応
*家の建築の初めは、土台が見える
*床が張られると土台は見えなくなる
*柱や梁は、骨組みを組み終わるまでは見える
*壁や屋根を張ると柱や梁は見えなくなる
*家がある間は各々の役割を果たしている
*神経系では、数々の活動を行う上で多様性に富んだ機能的役割を演じる

写真:著書「運動発達と反射」

脳の神経可塑性

時に、外傷やストレスで神経が傷つくことがあります。私たちの脳の神経は、修復不可能ではなく、そして何度もその神経を使うことで神経の道が舗装道路から高速道路へと強化され、その機能が回復していきます。

3発達の土台になる3つの原始反射

FPR(恐怖麻痺反射:初期子宮内反射)

*期間:5週(出現)⇒誕生(統合)
*刺激と反応:母体のストレスを感じると全身を固める
*動きの発達段階:相同(前後、上下)
*関連する問題:ASD,起立性調節障害、チック、触覚防衛反応(触覚過敏)

FPRの残存による特徴

外界からのストレスに対するコントロールに関わります。 不安な状況に置かれた際の過度な緊張、新しい状況や環境への恐れが見られます。

□ストレス耐性が低い
□環境が変わったり、驚くような出来事が嫌い
□柔軟に対応できない
□疲れやすい
□すぐに息を詰める(止める)
□人前で恥をかくような状況が怖い
□自己信頼、肯定感が低い、自己否定が強い
□愛情を受け取るのも表現するのも苦手(心と反対のことを言う)
□極度な恐れ、被害的な妄想
□新しい活動を嫌う、特に誰かと比較されたり、優劣が出るような活動を嫌う
□かんしゃくを起こす
□ストレス状況で固まる(考えることと動くことが同時にできない)
□人に近づけない、友達の輪に入れない、なぜか集団の場に居られない
□しゃべれない、聞けば聞くほど固まる
□恥ずかしがる
□人と目を合わせることに不安を感じる、避ける

FPR見極めテスト

① 筋緊張:伸筋のトーンアップ

*身体をそらして突っ張る
*手足に力が入っている

② 呼吸:呼吸が小さい

*顔色が悪い
*血中酸素濃度が低い

③ 輻輳眼球運動:指先をじっと見つめさせて、ゆっくり目に近づける。

*からだの揺れを観察
*頭が後ろへ押される

④ 空間テスト:向かい合って圧迫を感じるところまで近づいて来る。

*人見知りが強く近づかない

Moro反射

*期間:28週(出現)⇒5、6か月(統合)
*刺激と反応:音や刺激で手足を開いて、そのあと抱き着くまでの一連の反射
*動きの発達段階:相同(前後、上下)
*関連する問題:ADHA(注意欠陥・多動性障害),ADD,触覚防衛反応

Moro反射の残存による特徴

©(社)ブレインアクティベート協会

赤ちゃんは、自分に危険が迫ってもうまく判断できません。そのため、外的ストレスを感じた際に強く反応し、その後丸まって身体を守るまでの一連の反射です。

また、この反射は最も初期の「闘争・逃避反応」です。そのため残存が見られるとADHDの特徴(不注意、多動性、衝動性)が表れたり、アレルギー体質や起立性調節障害の要因になっていることがあります。

□突然の音、光、刺激による感覚過敏反応
□新しい状況や活動への参加対応が難しい
□衝動的な振る舞い
□被転導性(思考や注意がそれやすい)
□不安、特に予期不安(将来への不安)
□感情的、社会的な未熟さ
□偏食、食品添加物への過敏
□活動過多(ハイテンション)
□ADHD
□慢性疲労、アレルギー、喘息、慢性疾患
□怒りっぽい(慰めようと抱っこや触れるとますます怒る)

Moro反射見極めテスト

① 乳児の頭を後方へ30度落す:片手は乳児の頭の下に当て、もう一方の手は体幹上部を支える。頭を後方へ30度落すように、数cm手を離す。

② ペンギン歩き:股関節を最大外旋、最大内旋した状態で歩く。

*上肢が一緒に外旋、内旋してしまう

TLR(緊張性迷路反射)?

*期間:12週(出現)⇒9ヶ月(統合)
*刺激と反応:頸部屈曲で上下肢が屈曲、頸部伸展で上下肢が伸展
*動きの発達段階:相同(前後、上下)
*関連する問題:発達性協調運動障害、注意欠陥、低緊張、学習障害

TLRの残存による影響

この反射はバランス感覚に関連します。見上げたり見下げたりが苦手。 また姿勢反射の基礎でもあるため全身運動や手先の動きが不器用。

前方TLRと後方TLR

前方TLRでは腹臥位で身体の屈筋が緊張し、後方TLRでは仰臥位で身体の伸筋が緊張します。 前方TLRでは、弱い緊張が特徴。後方TLRでは、強い筋緊張が特徴。

TLRによるFPRとモロー反射の相互抑制

前方TLRはモロー反射との関連、後方TLRはFPRとの関連が考えられます。 それを図にする以下のようになります。

前側の反射が強いと緊張感が足りない感じ、ふにゃふにゃした印象になります。 頸を前に倒すと前側の筋肉が緊張するため運動時に前に転びやすくなります。 モロー反射と関わります。

後ろ側の反射が強いと緊張しているような、身体が突っ張っているような印象になります。 首を後ろに反ると背中側の筋肉が緊張してしまうので、運動時に後ろに転びやすくなります。 FPRと関わります。

□へなへな、フラフラしている
□つま先歩き
□バランス感覚が良くない
□でんぐり返しがうまく出来ない
□姿勢良く座れない
□方向・空間感覚をつかみにくい(ボール取り)
□視覚の問題(文字が飛び出して見える)
□空間、距離、奥行き、スピード感がつかみにくい
□全身運動の協調性が低い
□本を読むことを嫌がる、疲れる
□椅子に座って正しい姿勢を取ることが困難
□スポーツが上達しない
□乗り物の良いしやすい

TLR見極めテスト

① 腹臥位で抱く、仰臥位で抱く

*腹臥位で手足を伸ばせるか、仰臥位で丸まれるかを観察
写真:著書「赤ちゃんは運動の天才」

② 継脚歩行:つま先と踵をつけて歩きます。前へ、後ろへ。

*ふらつきを観察

③ 片足立ち:目を閉じて片足で立ちます。

*どちらがふらつくか観察
*できない子は眼を開けて、ふらつきを観察

④ 閉眼足踏み:両腕を前に水平に伸ばして目をとして50歩足踏みします。

*その場に止まっていられず、前に進むか後ろに進むか観察

運動アプローチ前の準備

理想的な環境

*赤ちゃんが腕や脚を自由に動かせる床の環境が大切 ①安全②清潔③暖か④滑らか⑤柔軟⑥平坦

©(社)ブレインアクティベート協会

刺激の基本

① 脳の発達の基本は、栄養、酸素、刺激
② 楽しく
③ 遊びとして
④ ゆっくりとした動き
⑤ 疲れたら止める
⑥ 身体の中心から
⑦ 初期に起こる反射の統合から

スイッチング(神経学的統合不全)の解除

*恐怖から交感神経が刺激されて呼吸が浅くなり酸素の取り込みが悪くなる。
*横隔膜の緊張から胸郭が硬くなり血液やリンパ液の流れが悪くなる。

① お水を一口飲むことで、緊張が鎮まる。
② 鎖骨の下を擦る
③ 口の上と下を擦る
④ 尾骨を擦る
⑤ おへそから顎までチャックするように手で撫で上げる
⑥ 深呼吸を繰り返すことで酸素の供給と血液とリンパ液の流れをよくする。
⑦ 肋骨弓に沿って掌で軽く押す

どうやって使うか?

① 子どもに関わる前に自分がする
② 子どもに運動アプローチ前にする
③ 自分が落ち着きたいときにする
④ 子どもに落ち着くきっかけを与えたいときにする

原始反射への運動アプローチ

©(社)ブレインアクティベート協会

①たて揺れ運動

膝に手を当てます。
リズミカルに、引くor押す。
働きかけ:FPR、 TLR、 Moro

©(社)ブレインアクティベート協会

②フリフリ運動

ウエストの位置の服を持って、腰を左右に揺らします。
働きかけ:FPR、 TLR、 Moro

©(社)ブレインアクティベート協会

③金魚運動

足首の上を持って、 左右に揺らします。
全身、 頭の先まで揺れが届くように。 魚のようにゆらゆらするイメージ。
働きかけ:FPR、 TLR、 Moro

©(社)ブレインアクティベート協会

④ダンゴムシ(ミートボール)

ひとりの先生が両脚を持ちます。
もう一人の先生が両腕を持ちます。
同時にゆっくり曲げ伸ばしを繰り返します。
両腕を頭に持ち替えて脚の動きに合わせて持ち上げます。
働きかけ:Moro、TLR
姿勢:仰向け


©(社)ブレインアクティベート協会

受動的なアプローチ: やってもらう

1. 片腕ずつ… 肘を曲げず、まっすぐ前方へ片腕を上げます。
片腕をそっと持って、 1~6秒間、 軽く引き上げます。
頭も上げてもらいましょう。
強さは、実際に1番と2番とどっちがいい? と聞いてあげましょう。
2. 片脚ずつ… 膝を曲げず、 まっすぐ片脚を上げます。
片脚をそっと持って、 1~6秒間、 軽く引っ張り上げます。
強さは、実際に1番と2番とどっちがいい? と聞いて上げましょう。
3. 両腕… ・両腕を持ってあげて、同時に前方へ引き上げます。
1~6秒間、 軽く引き上げます。
頭を上げてもらいましょう。
引き上げる強さや時間をご本人に選択してもらうことも良いでしょう。
4. 両脚… 同時に両脚を膝を伸ばして引き上げます。
1~6秒間、 軽く引き上げます。
引き上げる強さや時間をご本人に選択してもらうことも良いでしょう。



©(社)ブレインアクティベート協会

⑤スーパーマン

働きかけ:FPR、TLR
姿勢:うつ伏せ 

能動的なアプローチ:自分で動かす

5. 片腕、 片脚ずつ… 頭も上げて片腕ずつ上げます。 片脚ずつ上げます。
自分で1~6秒間の何秒間するか決めます。
6. 片側の腕と脚・・・ 右腕と右脚を上げます。
左腕と左脚を上あげます。
自分で1~6秒間の何秒間するか決めます。
7. 腕と脚の交差・・・ 右腕と左脚を上げます。
左腕と右脚を上げます。
自分で1~6秒間の何秒間するか決めます。
8. 両腕と両脚を同時に上げます。
自分で1~6秒間の何秒間するか決めます。

臨床で扱う原始反射

① 恐怖麻痺反射:初期子宮内反射:FPR
② Moro反射
③ 緊張性迷路反射:TLR
④ 吸啜・探索反射
⑤ 手掌把握反射:パーマー反射
⑥ 足底把握反射:プランター反射、バビンスキー反射
⑦ ガラント反射、ペレーズ反射
⑧ 非対称性緊張性頸反射:ATNR
⑨ 対称性緊張性頸反射:STNR

参考図書
*1 鈴木明弘.「大丈夫?子どものカラダ」
*2 倖田光洋.「第三の脳」
*3 Marylou R. Barnes, Carolyn A. Crutchfield, Carolyn B. Heriza. 「運動発達と反射」
*4 吉田優也.「発達障害の徒手的アプローチ」テキスト
*5 一般社団法人ブレインアクティベート協会.「教育ボディーワーカー入門講座」テキスト
*6 一般社団法人ここからだ, http://genshihansha.jp/genshihansha