社会に出て気づく大人の適応障害とは?防ぐための方法もご紹介します!
新しい環境への適応は、誰にとっても挑戦ですが、特に学生時代にはその困難さが見過ごされがちです。
不安やストレスに直面するたび、私たちの脳は微妙に変化し、それに適応しようと努力します。
しかし、これがいつの間にか「適応障害」という形で現れることがあります。
本記事では、適応障害に関する基礎から、前頭葉の使い方についてご紹介します。
適応障害とは?
適応障害とは、特定のストレスのある出来事や状況(例えば、失業、離婚、大きな環境の変化など)に対して適切に対応できず、心理的な苦痛や機能的な障害を引き起こす状態です。
この障害は、ストレスの原因となる事象が起きた後の数ヶ月以内に発症し、通常はその事象が取り除かれた後には消失します。
適応障害の症状には、不安、抑うつ、睡眠障害、集中困難などがあります。
重要なのは、適応障害は一時的な反応であり、適切なサポートと治療によって改善されることが多いという点です。
学生時代は気付かない適応障害
近頃、会社の経営者の方々から社員の話をよく聞きます。
そのなかで多いのが、
ということです。
指示に従った作業は、ほとんど自分の判断はいらずに「子どものおつかい」のようにお母さんに言われた通りの買い物をして帰ってくるのと同じです。
しかし、入社して2,3年すると案件を任されて、自分で段取りして仕事を終わらせなければなりません。
この時には、自分で判断することが求められます。
適応障害は、前頭葉の「判断」がカギ
人間が判断する際、前頭葉を使うことがカギとなります。
例えば、「家族4人のお昼ご飯を作るためにスーパーでうどんの玉を買ってきて」と言われたとします。
普通であれば、一人分のうどんがビニールで包装されたものを4つ買ってくれば良いですが、例えばお兄ちゃんは柔道をしていて食欲旺盛だとします。
その場合、
- 「4つでは足りないから5つにしたほうが良いな?」
- 「でも5つ買うと値段が高くなってお母さんに叱られるかな?」
と自分で判断することを求められます。
うどんを5玉買って帰るとお母さんから「どうして5つ買ってきたの?」と聞かれたときに「お兄ちゃんがいっぱい食べるからと思って5つにしたんだよ」と答えます。
そうするとお母さんは、「お母さんが何も言わなかったのに、よく気が付いたわね。お兄ちゃんが喜ぶよ、ありがとう。」と、とてもうれしい気分になります。
これが前頭葉の判断を使ったことによって得られる報酬です。
適応障害を防ぐには、スポーツで前頭葉を育てる
スポーツでも同じことが言えます。ここでは、『野球』を例に考えてみましょう。
野球を始めると、打つことが楽しいものです。
遠くへ飛ばすには、どんなバットを買えばいいか、友達に聞いたり、コーチに聞いたり。プロ野球選手がどこのメーカーのものを使っているか調べたり、お店に行って実際に見て手に取って振ってみます。
自分が気に入ったバットを買ってもらうと、ウキウキして実際に打ってみたくなり練習しようと思うようになります。
ピッチャーが投げたボールを打つのは、簡単ではありませんが、何回か振っていると、まぐれにうまく打てることがあります。
コーチが「ナイスバッティング!」と声をかけてくれると、嬉しくなってさらに大きなあたりを打ちたいなと思って練習を続けます。
上手に打てるようになるためには、練習量と共にどうしたら上手に打てるかを工夫することが必要です。
私も、テレビの野球中継を毎日見て王貞治選手のバッティングホームを真似してバットを振っていました。
それは今も変わりません。
真似して工夫してやってみて上手く出来るかできないかを確かめて、なかなかうまく出来なくて手にまめができても一生懸命に工夫して、上手く出来た時には、「やったー!」と思います。
スポーツをしている人は、このことを繰り返しています。
一流選手ほど前頭葉を使っている
もっと具体的に行うためには、大谷選手のように紙に目標を真ん中に書いてそれを達成するために必要なことを周りに書いてどんどん具体化するということをすることで、目標を達成するためのプロセスを考えます。
プロの選手でも記録を作る選手と日の目を見ないまま引退する選手がいます。
体格に恵まれていても、どうすれば上手になれるかを順序だてて考えて実行できないとプロの世界では勝ち抜けないのです。
この行為が、社会に出て仕事を任されたときに、身についていれば簡単に仕事をこなすことが出来ます。
何が前頭葉の成長を妨げているか?
しかし、今流行りの電子ゲームは、攻略本を読んで指を動かすタイミングを合わせることが出来れば、手に豆を作らなくても繰り返せば上手になります。
しかし、最後まで攻略するのは難しく、途中でやられてしまいます。
ゲームの中でキャラクターが死んでも自分に痛みはありません。
あまり深く考えなくても直ぐにリセットをすれば、最初から始めることが出来ます。
リスクを背負わなくても良い代わりに大きな報酬も得られないという事に加えて、少し上手くなったという小さな報酬が得られることで、宝くじと同じ依存傾向を示すことになります。
脳トレで有名な東北大学教授の川島隆太先生によると、ゲームをしている時の脳の活動状態をMRIで調べた時、『予測していたぼどの脳の活発な活動が見られず、前頭葉の働きは少なく活動範囲が限定されていて、単純な足し算引き算のほうが広範囲で前頭葉が活動していることが判った』と述べています。
何故、電子ゲームで前頭葉が成長しないのか?
別の脳の研究によると、現代の脳の仕組みは原始時代と変わっていないことが判っています。
原始時代に人間が生き抜くためには行動が必要で、木の実を食べるには危険を冒して高い木に登り、木の実を取ってきます。
肉が食べたくなると、うまそうな動物を探して行動をして危険を冒して動物と戦って獲物をしとめます。
大きな動物をしとめるためには、相当な工夫が必要になり、時には遠くまで行くことになります。
木の実と肉を得るには、相当なリスクを伴いますが得られた物の美味しさは格別で、リスクを冒してもまた取りに行こうと思います。
そうすることで次第に上手に得るようになります。
この行動を脳の働きを表しますと、リスクを負うことで危険(偏桃体)を感じ、工夫をする(側頭葉経路から前頭葉)ことで、獲物という報酬(側坐核)を得て、家まで(海馬の場所細胞)帰ってきます。
この4つの領域のバランスが大切です。
リスクばかり背負って報酬が得られなければ、次第に不安を感じることが強くなり、逃げ出したくなり、それが鬱や引きこもり、適応障害に繋がります。
現代では、食料はスーパーに行けば買えますので、スポーツが狩猟行動に値します。
大事な脳を成長させるためにどちらを選択したら良いか、おのずとわかりますね。
私たちは、動物の法則の中で生きているという事を忘れてはいけません。
参考文献
アンデシュハンセン著「運動脳」
川島隆太著「自分の脳を自分で育てる」
松本隆宏著「アスリート人材」